ゲーテの原型 植物と動物の間

図1 ゲーテによる原植物

図1 ゲーテによる原植物

 ゲーテは、形態をある一つの原形から変容しながら発展していく「なりたち」を持っていると考えた。この原型は、植物では、葉の形であり、動物では、椎骨の形である。植物とは、葉のメタモルフォーゼが連続して連なった形態である(図1)。ゲーテは、そのように見た。根は、地下に伸びる葉であり、双葉から多くは螺旋的に展開しながら葉をつけ、愕となり花弁となって、雄しべ雌しべとなり、最後に実や種を結ぶ。種の中に含まれる胚葉までも考えの中に含まれている。雌しべ、雄しべ、実、種でさえも葉のメタモルフォーゼなのである。

図3 人の脊椎骨とゲーテによる原動物
図2 人の脊椎骨とゲーテによる原形
 

動物の胸部は、静止の極としての頭部と運動の極としての四肢の間にあって呼吸などをおこなう律動する座である。そこには肋骨の形態がリズミカルな繰り返しを見せる。ゲーテは、この胸部を中心とした背骨に本来の動物の骨格の原型を設定した。随分悪戦苦闘があったようである。人の脊椎骨が形態変化してゆく一連の図が図2の右である。頸椎骨の上部から胸椎、腰椎、そして最後は、頭蓋骨の底部にある蝶形骨の図である。椎骨のメタモルフォ-ゼとして骨格の形態変化を考えたのである。

日高敏隆 選集Ⅲ 昆虫という世界

しかし、植物と動物の原型の間はあまりにかけ離れ過ぎてるとずっと思ってきた。何か欠けてる、そうミッシングリンクがある。ところがある時、ある本を読んでいてピンときたのである。日高敏隆(ひだか としたか)選集Ⅲ 昆虫という世界(ランダムハウス講談社)のなかの『頭・胸・腹と翼の論理』にあった。 この言葉「ありえそうにないすじを消して、すこしでも可能性の高い線を残してゆくと、昆虫類は今日の多足類のような仲間に翅が生えて生じたらしいという結論になる。」これだ! 大の男がこんなことで小躍りしてアホかと思われそうだが、驚喜したのである(狂喜かもしれない)。

図2 ムカデ

図3 ムカデ

ムカデ(図3)やヤスデからアタマ・ムネ・ハラの三つの体にハネが4枚、アシが6本の昆虫が出来上がった。飛ぶようになったからだと推測している。飛ぶために頭の後方の三つの胴節は大きく長くひとまとまりになった。しかし、翅の生えたムカデを想像してほしい。これは、あんまりだ。うしろが長すぎる、それで足をかなりと胴の長さを節約した。しかも歩けなければ不便だ。そこで、足を全部なくしてしまわないで胸部の六本の足を大きく逞しくした。これで万全だ。そうだ、成虫の前々段階の芋虫はムカデの足を短くしてずんぐりむっくりにしたものだ。日高さんの推測は、考えられうるかぎりパーフェクトなものだった。

植物の篠竹を想像してほしい。その根っこをとってそれぞれ節から生えている葉もとる。節で何か所も分節された細い円柱から葉柄がピンピンと出ている姿が節足動物に重なるのである。それが哺乳類などの脊椎骨に重なる。昆虫は、外骨格を選んだ、丈夫な体を得た反面、体を大きくする自由を失なったのである。人のご先祖様は、骨格を内側にして多くのものを支えやすい体にしたのである。そして立ち上がった。それで大きな頭蓋骨と自由な手を手に入れた。つでに痔ももらった。

何故ゲーテが好きかというと並々ならぬ今日的可能性を秘めているからである。河本英夫さんの『システム現象学、オートポイエーシスの第四領域』を読んで確信した。でも、そのことはまたの機会に。