Jewish wounds and perishing summer flowers 「ユダヤの傷と燃え落ちる夏の花」

For the dedication to Paul Celan 
パウル・ツェランに捧ぐ







Todes fuge 死のフーガ   2021‐2022  100cm×100cm




Hier ここで  2021-2022  117cm×91cm



TENEBRAE 暗闇   2021‐2022  117cm×91cm




Engführung 追迫部  2022  91cm×117cm




Wir Lagen 私たちは横たわっていた  2022  100cm×100cm









ギラギラの破片ヤ  2022  117cm×91cm




真夏ノ夜ノ河原ノミヅガ  2022  100cm×80cm




日ノ暮レ近ク  2022  117cm×81cm




碑銘  2022  100cm×100cm


■ Production materials
制作素材

Japanese paper on canvas
基底材  カンヴァスに和紙 アクリル下地    
Original paint (made from resin,oil and beewax), egg tempera,Oil, Acryl
絵の具  オリジナル絵の具(天然樹脂、油、蜜蝋)、卵テンペラ、アクリル、油彩



 凄惨な歴史の記憶はどのように語られてきたのか? パウル・ツェランと原民喜 ツェラン


1962年から1963年にかけて、広島から3千キロ以上離れたアウシュヴッツへ向けて、ほぼ徒歩によ平和行進が行われました。グローバルな「コスモポリタンな記憶文化」という発想は比較的最近のものですが、この広島・アウシュヴッツ平和行進は、第二次大戦後の記憶のグローバル化と絡み合った戦争の記憶化が1960年代初頭にまで遡ることを示唆しています。生き延びた経験と証言活動が、どこでも同じという分けではありませんでしたが、平和行進の参加者たちは、戦禍による被害を抽象化し、普遍化することによって、異なった状況にある被害者たちの意識を結び付け、国際的な関係性を築こうとしていったのです。こうした犠牲者=証言者のグローバル化は、語りの収束を可能にし、ひいては「証言者の世紀」をもたらすことに貢献してきました。

しかし、このホロコーストと原爆被害を結び付けようとする運動は、パレスチナ問題といった政治的な理由などによってその後の大きな展開を見ることはありませんでした。アメリカの歴史学者ラン・ツヴァイゲンバーグ氏は、父方の祖父がダッハウの強制収容所から解放され、母方の祖父はシベリアの強制収容所から解放されているというパレスチナ出身の人ですが、原爆被害が自然災害と同じようなイメージに変質していっているのではないかという指摘をしています(『ヒロシマ』)。また、福島の原子力発電所事故で移住を余儀なくされた人々が、子供たちを中心に差別されたことは、私のように広島に住む人間には大きなショックでした。反核運動などの非核化が叫ばれ続けるなかで、ステレオ化された言葉が力を失ってきているのではないか。そのような疑念さえも生まれるのでした。

このような、状況の中で二人の詩人に焦点を当てた展覧会を開催したいと思うようになりました。一人は、現在ロシアとの戦争が行われているウクライナ出身で、20世紀最大の詩人一人といわれるパウル・ツェラン、そして、原爆詩人の原民喜 (はら たみき) です。

パウル・ツェランは、1920年、旧オーストリア・ハンガリー帝国(現ウクライナ)の南西、チェルニウツィーに生まれます。その地はソ連の侵攻をうけたのち、ドイツ軍に占領され、ユダヤ人である両親は強制収容所で亡くなり、自身も強制労働収容所に収容されました。原は1905年、広島市の幟町に陸海軍・官庁用達の繊維商の家に生まれます。千葉で英語の教師などをしながら俳句、小説や詩などを書くという生活を続けていましたが、妻の死の翌年、1945 (39) 2月に広島に帰郷し、被爆します。彼らの創作活動の原点は、そのようなホロコーストや被爆といった苦難を生き残ったことにあります。それは、創作のための極めて重要な動機となっていきました。原は、こう書いています。「自分のために生きるな、死んだ人たちの嘆きのためにだけ生きよ。僕を生かして僕を感動させるものがあるなら、それは、みなお前たちの嘆きのせいだ (『鎮魂歌』)。」パウル・ツェランはこう詠いました。「人間たちのかなたに/まだ歌える歌がある(『糸の太陽たち』)」彼らの詩は、死者たちのための鎮魂の詩となっていきました。

このようによく似た人生を歩みながらも、自死によって生涯を閉じた二人の偉大な詩人の世界に思いを馳せながら、彼らがどのようにホロコーストや被爆といった問題を語ったのか? ウクライナにおける戦争において、ロシアによる戦争犯罪と核兵器による恫喝が取り沙汰される今、平和とは何か、人間の残虐や差別の問題とは何か? 考えてみたいと考えました。

2022年8月31日







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